室内犬を仔犬から飼った経験がある方はイメージしていただきやすいかもしれませんが、仔犬を自分の家に招き入れた際にトイレのルールに慣れさすのには大変苦労します。
十分な根気と時間が必要ですが、それも生物と一緒に暮らす事の楽しさでもありますよね。
さて、来たばかりで、まだその環境に慣れていない仔犬が、あっちこっちでウンチをしてしまうことに対して、飼い主が怒り散らすことで余計にあっちこっちでウンチをしてしまう、という現象をご存知でしょうか?
これは、発達障害児の養育でも、生じる反応とよく似ていると感じています。
たとえば、ADHD傾向の児童に対し、その親が「忘れ物ばかりする!」「整理整頓ができない!」「勉強しない!」と、頻繁に出来ていないことばかりを責めると、余計に短期記憶障害が生じて、生活上の困難さが増えてしまうという現象と重なります。
仔犬の場合、ウンチをあっちこっちでしたことで飼い主に怒鳴られた経験があると、便意を感じただけで、すぐさまパニックになってしまうことがあります。
ドッグトレーナーは、仔犬が粗相をしてしまっても決して怒鳴ったりはせず、「なかなかトイレを覚えてくれない」と飼い主から相談された際には、まずは怒鳴るのをやめるようにアドバイスするそうです。
その上で、犬の本来の習性として自分のウンチの匂いがする場所でウンチをしがちなので、例外的に飼い主がして欲しい場所である適切な場所でしたときには、盛大に褒める!
こうして、例外的に生じた適切な排泄という学習を強化していくというアプローチを「仔犬の学習強化アプローチ!」と勝手ながら呼ばせていただきます!
発達障害の育児も同様で、あくまで「治すのではなく、学習できたことを強化するアプローチ!」が有効ですので、例外的に忘れ物をしなかった日を盛大に褒めることが大事です。
ただ、そんなことを診察室で親御さんに指導すると、「そんな例外が1日もないから、受診に来てるんです!」と返答されることもあります。
そんな時は、診察室でこんな風に親御さんにお願いしています。
『一定期間でいいので、本人と一緒になって明日の準備をして忘れ物がない日を作ってもらえませんか?
まずは、親御さんが頑張って、無理やりにでも、本人が忘れ物をしなかった日を1週間程度生じさせて、例外を親が作り出してください。
その後に、親御さんが、お子さんに対して「すごいやん!なんで忘れ物しなかったん?」と笑顔で聞いてみてください!』
そして、「本人ができたこと、頑張ったことを、親御さんが盛大に褒めてあげてください」とお伝えさせていただいています。
命名するなら、「無理やり、学習強化アプローチ!」ですね。
コロナ休みで、ダラダラ癖がついてしまったお子さんにイライラがつのっている親御さん「仔犬の学習強化アプローチ!」どうでしょうか?