2022年9月28日水曜日

子育ての正解

 たまに先輩の精神科医とお会いして僕自身の子育てなどを指導してもらっており、その際のミニレクチャーをこの場でまとめておきます。

『子育ての正解は、その子が大人になって人生を終える瞬間に「あ~、生きてきて良かったな~」と満足して死ねることだ。つまり、基本、親は先に死んでいるから、親自身はその子の子育ての正解はわからないまま人生を終えることになる。だからこそ親が、その子がその子らしく生きていける一番の味方になってあげるスタンスが大事だよ』
と指導されました。

その先輩医師自身は親に怒られて、今でいう教育虐待を受けて医師になったそうです。
確かに、先輩は医師となり社会的には成功しているように見えるかもしれませんが、実際の先輩自身の気持ちとしては医師になりたくてなったのではないし、親に対して感謝というよりも恨みや憎しみの感情を抱いてしまうんだそうです。
そういう意味では、先輩自身の親の子育ては失敗だったと子ども側の立場の先輩からみたら思っているし、親には、もっと子どもを尊重した子育てをして欲しかったという思いがあると、僕に語られていました。

また、
『子育ての天才がまれにいる。それは、親自身が精神的に穏やかであること。また、子ども自身も精神的に穏やかであること。』

この二つが揃うことが、子育ての天才になるそうです。
しかし実際は、僕も含めてそうではありません。

だからこそ、
『謙虚になって子どもにはなるべく怒らないように精神的に穏やかになれるように親として努めなさい。また、1回親が子どもを叩いたら、その子が大人になったら100回叩かれ返されるようなもんだと思っておきなさい。トラウマを子どもに起こさせないためには、親が感情的になって怒ったりしないこと』
と指導されました。

毎回「はい、わかりました!」と、こっちが返答して終わります。
僕自身も子育て世代ですので肝に銘じます!
いつも、ご指導ご鞭撻ありがとうございます。
先輩!

2022年9月21日水曜日

知識があるから意識になる

発達障害の児童の診療をしているなかで、そのお母さんも当院に来てくれます。
多くは、お子さんの同伴ですが、なかには、お母さんがおひとりで通院されることもあります。

そのお母さんに、お子さんの発達障害の心理教育をして、知識が増えていくことで、お母さんは、適切な関わりを身に着けていかれることが多い一方で、お父さんは、そうした知識を得ていない状況で子育てにおいて好ましくない関わりが続いてしまい、ご夫婦が、子育てなどを巡って対立してしまうことがあります。

どうしても、知識がないと意識化されないので独りよがりな関わりになってしまい、知識の差は意識の差となってしまいやすいのです。
僕自身も、たくさん知識を増やして、少しでも意識的に気づける量を増やしていきたいと懸命に努力中です。
そこから得た知識を、少しでも患者さんにわかりやすく伝えて意識の共有を図っていきたいと思っています。
そのためにも、まずは僕が知識を増やし、患者さんやご家族の方と知識を共有していくことが大事だと思って日々勉強中です。
そこから、お母さん、お父さん、本人自身、そのご家族、学校、社会と知識が広がって、意識が広がって、よい社会になって欲しいなと願って診療しています。

2022年9月14日水曜日

僕の精神療法はチック的

ぼくを含めて多くの男性の方で発語の調子が、どっかでチック的な方がいると思うんですけど、僕自身、何か短い言葉で言いたい欲求結構あります。
なので、僕の精神療法はチック的、キャッチフレーズ的です。
そのキャッチ―な言葉を患者さんの心に遺すことで、患者さんの中に、何か楽になれるというか、よい変化を生みやすくなるというか、そういうことを狙って、今日も、僕の頭の中は、あまり賢くない頭をフル回転させて「短い言葉」を患者さんの心に遺せるように、患者さんと向き合っているところです。

2022年9月7日水曜日

ASD特性の共有と理解の重要性について

 自閉スペクトラム症(以後ASDと略す)の脳の発達は、生後1歳から2歳の間は定型発達児よりも脳体積サイズは over growth(過形成)よりで特に大脳、小脳の白質、大脳の灰白質(特に前頭葉)が過形成ぎみであることが多いとされています。
また、神経病理的には神経細胞のニューロンやグリア細胞の過剰な発達、プログラム化された細胞死(アポトーシス)、シナプスの形成や機能異常が考えられています。
その後、成人に向けてASDも定型発達も形態的には、ほぼ一緒になっていきます。
局所的には、体積減少の報告が多いと言われていますが、実際上は評価は困難なことが多いようです。

こうした脳の発達異常から実際上で生じてくるのは、ASD傾向のある子どもの方が脳のオーバーロード(混乱)が生じやすいということになります。
つまり、対人のコミュニケーション場面において、開かれた質問をされたり、いつもと違う変化が生じたり、複雑なコミュニケーションなどが生じた際に、混乱を呈しやすくなります。

反対に、自分の興味や動機からの発信に対しては過集中となります。
これは、わがままというより特性であり、強みであり、弱点でもあります。
そして、「できることを増やしていきたい」と思うのが、子を持つ親の本能です。

しかし、親やその周囲の人らがASDの特性と戦ったらダメです。
涙とか、最悪、心の血が双方に出ます。
その子に合わせた効果的な関わりかたを一緒に考えていく上で、この「脳のオーバーロード」を念頭においておくことが重要になります。

養育の仕方においても、色々と周囲ができることをみんなのようにできないことで、自責的になる必要がないというケアが大事になってきます。
ASDの特性を含めて「どう対処するのか?」の前に「何が起こっているのか?」をまずは理解していくことが支援において重要だということだと思います。