2020年9月24日木曜日

相補の関係について

今回は、夫婦関係をはじめとするパートナーとの関係性において、類似性や相補性、そして相称性についてふれてみたいと思います。

まず対人関係で知らないもの同士が仲良くなっていく際に、出会いの当初では類似性が大きく関与します。
ここで関与する類似性とは、趣味とか、笑うツボが一緒だったり、同郷だったり、境遇が似ていたりすると、それをネタに話を弾ませることができます。
また類似性があると、相手への親近感・信頼感も増します。

次第に付き合いが深まるにしたがって、共同で何かを行うことも増えてくるので相補性が必要になってきます。
例えば、『僕はこれをするので、君はあれをやって~』と役割分担していくといったことです。
特に、結婚となると外見や類似性だけでは長続きせず、相補性が重要になっていくケースが多分にあるのではないでしょうか。
なぜならば、それぞれの足りない部分を補い合うことで、一つの共同生活を効率よくスムーズに進めて行きやすくなる傾向にある為です。

ただ、そういった相補のコミュニケーションをとる関係から徐々に相称のコミュニケーションも増えていくことがあります。
関西人ですので馴染みのある漫才で例えると、ボケとツッコミというお互いの役割でバランスが保てていた状態から、ツッコミとツッコミのコンビのような状態になり、お互いが自分の主張をし合うなどのコミュニケーションが増えるわけです。
二者関係がこういった状態になると、相補関係から相称関係が増えていき、ぎくしゃくしてくるということが起こりえます。
夫婦関係において、こういったお互いが主張をし合う相称関係の状態が続き、その延長線上での口論になることで、いわゆる「あ~いえば、こういう状態」の激しい夫婦喧嘩になることがあります。

より身近な関係性であるが故に、知らず知らずのうちに、お互いが補っている状態であることを失念してしまうということは否めません。
どちらかが相称になっていると感じたり、身動きがとれにくくなっていると感じたら、相補のコミュニケーションを意識してみてはいかがでしょうか。
お互いで、この相称と相補のコミュニケーションを繰り返しつつ、お互いの関係性を維持していくことが大事なのではないでしょうか。





2020年9月17日木曜日

発達障がいの子供の発達で大切なこと

 当院では、日々、2歳頃~大人に至る幅広い年代の発達障がいの患者さんを診察しています。
院長である僕自身、人生のロングスパンの成長や発達を、診療を通じて日々勉強させていただいています。

診療の中で感じていることとして、人の人生を動かすのは『問題解決』ではなく、本人の持つ『強み』だということです。
その『強み』とは『得意』+『興味』で出来ています。
『得意』は、親や周囲の人から「すごいね~」と褒められて出来ていき、『興味』は、親や周囲の人から「好きなことをしていいよ~」で出来ていきます。
そして、その『得意』と『興味』が相互に作用しあって『強み』となり、その子の人生を動かしていくということが、大事なことだと思います。

親が子どもを育てて『強み』を持てれるようにしていく関わりで大切なことは、究極的には「好きなことしていいよ~」と本人を尊重して応援してあげることと、本人が頑張って取り組んでいることを認めてあげることなんだと思います。

発達障がいの子供の成長の仕方としては、凸凹のままで成長、発達していくからこそ、出来るところを伸ばしていくことが大事だということです。
長所を伸ばしていくことで、大人になってそこが強みになり社会で誰かの役に立っていく。
短所とか苦手な部分は、誰かにサポートしてもらって助けてもらうということが大切なんだと思います。

例えば、発達凸凹な僕自身、クリニックに関わることにしても色々な方々にサポートしてもらって何とかできています。
家に帰ったら、妻や家族に色々支えてもらって何とか生活できています。
そうした支えを僕は受けて、日々の診療で患者さんの役に少しでも立てたらと思っています。
僕自身も出来ないことは、ほどほどにして、誰かのサポートを受けながら出来ることを伸ばしていくように努力して「今の自分の人生を豊かにさせれていただいているなぁ~」と実感しているところなので、このことは共有しておきたいなと思いました。

 

 

 

 

2020年9月10日木曜日

人が幸せになる方法について

皆様、いかがお過ごしでしょうか?
僕は軽く病み気味ですが、でもひそかに『幸せになりたい!』と日々願っています。

そんな僕なので『幸せになるためにはどうしたらいいかな?』と考えてみました。

・まず、自分自身を大切にする。
・その次に、自分の家族や自分にとって近しい人を大切にする。
・そのさらに辺縁の人を大切にする。


この循環が「幸福」に近づくのだろうと思います。

幸福のために必要なものの基盤に、もちろん心身の健康、お金、家とか車とか物質的な豊かさとかもありますが、でも極論 、やっぱり人は「人間関係で病み」「人間関係で幸福になれる」部分が大きい気がします。
その基点は必ず自分にあることを、常に意識しておきたいと思います。

他者は自分の心の鏡であることが多いことは、精神科医として実感しています。
仮に、こちらが相手を嫌うと、向こうは自分にとって嫌な人として自分に作用してくるし、逆に、自分の方が相手をゆるせたりしたら、相手も自分をゆるしてくれることが多いと感じています。

2017年に105歳で亡くなられた聖路加国際病院の日野原重明・名誉院長が、当時100歳を超えていながらも講演でずっと立ちながら熱弁していた話しを紹介させてください。
日野原先生は、人の人生で一番大事なことは「ゆるすこと」ですと訴えていて、当時100歳を超えてなお現役であった生き方上手の先生が言うんだから物凄く説得力がありました。

日野原先生は「人は自分をゆるし、他者をゆるすことが、何よりも大切なことであり、尊いことなんです!ゆるすことが世界から戦争をなくし、平和な世の中にするための唯一の手段なんです。そのことを、誰よりも知っているのが我々医療者であるはずです!」と続けて熱く語られました。

正直、僕はちょっとしたことで、すぐに人に対してイライラしてしまいます。
その度に、この言葉を思い出して自分から日々謝っているつもりです。
でも先日「いつも、絶体、謝らんな!自分!」と妻に指導を受けました。
いかに自分自身できていないか?を反省させられる日々です…(苦笑)

2020年9月3日木曜日

不登校回復の『4段階ステップ』

今回のブログは不登校の回復について、みなさんと共有したい『4段階ステップ』について投稿したいと思います。

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  ① 健康
  ② 仲良し(家庭内)
  ③ 意欲(遊び ⇒ クラブ活動 ⇒ 勉強など)などのwant(~したい)行動
  ④ 学校に行くなどの社会的なmust(~すべき)行動(社会的緊張)

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不登校の支援などの診療を通じて感じていることは、この回復の順番をきちんと守っていくことが大事だな~と思っています。
①、②のステップについては、家庭内で本人の心身の可動性を回復していくことが、建物で例えるなら土台作りという基礎の部分になります。

その上で③の領域である、遊びや趣味、クラブ活動といった息抜きに近い「ちょっとさぼり?」と捉えられるような行動を楽しめたり、活動の幅を広げることができて、本人の安心領域が家から社会的なものまで広がっていくという、基礎部分の土台の上に建つ建物の1階部分になります。
そこをしっかり広げていき安定した状態で、勉強するとか、学校に行くなどの建物の2階部分を増築していきます。
④の学校という場所は、不登校の児童らにとっては、社会的緊張の頂点にあるところだと思います。

結構、この『4段階ステップ』を、家族や本人、学校などの支援者らも含めて共有しておかないと、「なんで学校で授業も受けてないのに、部活には来れるねん?」とか、「勉強もしないで、家でゲームばっかりやん!」と叱責ばかりになってしまって、返って次のステップに行きにくくなるということがある気がします。

もちろん、健康度がしっかりあるにもかかわらず本当にさぼりの子と、精神的な疾患との線引きの見極めは一般の方には難しいのかもしれません。
ただ、不登校でしんどそうな子がいたら、こういう『4段階ステップ』で徐々に自分のペースを大事にしてもらい進んでいく方が結局は良い方向に行くことがしばしばあります。

もしも迷われたら、建物でいうところの基礎固めであったり1階部分に戻って、まずはしっかりとした耐震構造の平屋建てを構築していく方がいいんだということを、みなさんと共有したくなりブログに投稿させていただきました。



2020年9月1日火曜日

精神科医としてどう変わったか?

開業して3年が経過しました。
3年前までは、精神科の病院などを中心に勤務医として約10年間働いてきました。

クリニックを開業してから勤務医の頃を振り返ると、当たり前のことですが、勤務先の病院全体の一部分としての役割を担っていたんだということに改めて気づかされました。
勤務医当時、僕が主治医や担当医師としてかかわらせていただいた多くの患者さんは、その地域の大きな病院ということを目的として来院されていました。
入院ができる病棟施設があり、検査などの充実した医療サービスを期待して来られた患者さんがほとんどです。

ですが開業してからは、患者さんは、僕の診療を期待して来院されることが大前提となりました。
当院ではカウンセリングや心理検査なども行っていますが、あくまで僕の診療がメインとなります。

勤務医時代は、1時間くらいの面談をしたり、児童精神科の外来は再診でも30分程度の時間を何とか捻出してやっていました。
しかし、開業してからは初診は30分前後、再診は5分~10分程度と短くなりました。
でも、僕自身の診療の技術やクオリティーは、今の方がいいと感じています。
「当時は、時間は結構かけていたのに、知識、技術が足りてなかったんだな~」と今でこそ感じています。
もちろん患者さんによっては、当時のようにじっくりと時間をとっていた頃の僕の診療の方が良かったと思われる方もおられるでしょうし、全ての方のニードを満たすことはできないとは思っています。

開業したことで「自分の診療が、最大の商品」だという認識になり、それでご飯を食べていけるようにという意識があがりました。
自分の診療という商品で、ご飯を食べていける実感を持てていることが、僕にとっては何よりのモチベーションになっています。

これもひとえに、未熟な治療者である僕の診療に通院してくれている患者さんのおかげです。
これからも診療の質をあげて、少しでも患者さんを楽にできるように日々精進していきたいと思っております。

開業して4年目を迎えた当院を、今後ともよろしくお願い致します。