2022年3月30日水曜日

自閉スペクトラム症の特性そのものは変わることはできない

僕は日々の診療で2歳から大人までの発達障害の診断や心理教育、治療をしています。

特に、自閉スペクトラム症の特性である臨機応変な対人関係が苦手であったり、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的な志向の特性そのものは生涯を通じて変わらない部分なのです。
(そうした特性を隠蔽するなどは可能ですが・・・)
自閉スペクトラム症の特性は、脳の働きの本能的なものなので、そこを治さないといけないと自分自身が思うと自己否定を生じ、うつ病、適応障害、社会恐怖、チックなど2次障がいを招く結果となりやすく、本人自身の周囲の人が、本人の特性を否定し続けたり、受容されない状態が続くと、やはり2次障がいを招く結果となりやすくなります。

まずは、本人と関わる近しい人が本人の特性を受容することが重要です。
ここが最大のハードルであり、逆に、本人の近しい人が受容できるようになると自閉スペクトラム症の2次障がいを回避できる可能性が格段に高まります。
そのために自閉スペクトラム症の診断を早期につけて、自閉スペクトラム症の実践的な心理教育をして本人の身近な周囲の人の徒労感や傷つきにもより添いたいと思っています。

自閉スペクトラム症の特性そのものは、どうしても相互の対人関係で悪循環が生じやすい為、まずは、本人自身や周囲の人に理解してもらっておきたい一丁目一番地は「自閉スペクトラム症の特性は、生涯持ち続ける岩盤のようなもの」ここを共有しておきたいと思います。

自閉スペクトラム症の特性を知って
 ⇒ 理解して
  ⇒ ユニークさを受容していき
   ⇒ オンリー1へ。

このルートに入っていく支援が大事。
社会的な常識(普通は~こう~)を、本人も身近な支援者も、そうした常識的な考え方(普通は~、こう~)を、脳内で、一部破壊していくことが
大事になります。
そのために診断をつけて、本人やその周囲の人が障害受容していくサポートが大事だと日々思いながら診療しています。

2022年3月23日水曜日

問題指向より解決指向!

僕が人生でもっとも「問題指向」になったのは、2浪した後に大学に落ちた時です。
落ち込んで寝込んでいるとき、その時は、本当に死んでしまいたいとまで思い詰めていました。

その寝込んでいた時に、
「こんな家(作田家は、特にこれまで学歴などとは無縁の家ということでしょうか?)から、豊中高校(僕のエリアでは、まあまあの進学校です。)に入って、すごく親としてもうれしかった。これまでも、やすあきが家族をたくさん喜ばせてくれてユーモアがあって楽しませてくれた。・・・」
と母は泣きながら、僕に対して「このままのあなたでいいし、存在そのものがOK!」という感じを伝えたかったんだと思います。

その後、何か僕の心の中がポカポカしていったのを覚えています。
さらに数日経過して落ち込むのも飽きてきて、自転車で1泊2日で1人旅をして、帰ってきてから3浪目の準備をして予備校に通って1年後にやっと大学に合格できました。

これが僕にとって母から受けた人生で一番重要なカウンセリングだったと思います。
問題ばかりに埋め尽くされていた自分に、自分のいいところに焦点を当てて母からそこを褒め続けてもらう。
(心理学的には、コンプリメントシャワーという感じ。)
 ⇒ その結果、自分自身が今の自分の短所から長所に目が行くようになる。
  (問題への焦点化から、解決への焦点化へのシフトチェンジ!)
  ⇒ 自分の解決像が明確になり、それに向けて日々を淡々と送れるようになりました。

「問題指向よりも解決指向!」この転換点の経験がなければ僕は精神科医となったり、こうした今のような治療者のスタンスにはなっていないと思います。
なので、この2浪時の挫折も財産なんです。

挫折、あざ~す!
もちろん、できたら受験で落ちたくないですけどね。

2022年3月16日水曜日

うまくいかないことを素直に悔しがれることが大事!

熱戦が繰り広げられた北京冬季オリンピックでしたが、各競技後インタビューの選手のコメントで悔しさを素直に表現されている選手たちをみて、素敵だなと思いました。
オリンピック代表の選手になるには、こうして素直に悔しがって、その悔しさと正直に向き合うことが、本当に大事なんだなと感じました。

多くの人は心のどっかで自分の素直な感情を抑制したり、言い訳したり、誤魔化して生きているところは結構あると思うんです。
そっちよりも自分の気持に素直に生きようとする姿勢は、失敗したり、うまくいかない時にこそ出るな~と思いました。

自分の中にある純粋な気持ちを大事にすることが、素敵な人になるためにとても大切なことなんだと改めて感じました。
また、仲間を思いやり、自分の周囲の人を大切に思っていること、そして身近な人同士の繋がりの大切さをオリンピックを通じて感じました。

にわかでちょっと見ただけで、にわかに感動させてもらいました。

2022年3月9日水曜日

あきらめるは、明らかに見る!

子どもの頃に「あきらめないで頑張れば何とかなる!」と、根性で頑張り続けることの大切さを、学校や色々な教育場面で教えてもらった気がします。

しかし、実際に人生を重ねていくと、頑張っても何ともならないことも結構経験しますよね。
それで、次第に諦めて、現実と向き合って、自分なりの人生となっていく。

僕としては、教育場面で「あきらめる」ことの重要性も教えてあげて欲しいなと思います。
「あきらめる」は「明らかに見て」自分の長所や特性をなどを把握し、伸びしろを拡張し、頑張っても、あまり効果がないことは、やめておくという前向きな要素があるということです。

人は各々、勉強ができる人、運動が得意な人、面白い人とか、特技や長所が違っています。
そこを見定めていくことは、その人が、その人らしく生きていくために大事になってくるからこそ、

あきらめも肝心!ですね。

2022年3月2日水曜日

機能的な怒りと非機能的な怒り

かつて日本のプロ野球界において闘将と呼ばれた星野仙一監督のように、集団をまとめたりする際、あえて怒りの感情を全面に出して統率力を上げたり、他者にこちらの真剣な気持ちを伝える意味で怒りとして表現する時があると思います。
このように操作的に怒りを発生させていく際は『機能的な「怒り」』だと言えます。

ただ、実際診察して感じる「怒り」とは「寂しい」「悲しい」などの素直な感情がうまく表出できず、イライラして近しい人(夫婦関係、親子関係などの愛着関係にある人)に不満をぶちまけたりするなど『非機能的な「怒り」』を表出されていることを多く認めています。
このような「怒り」は、相手を狼狽させるだけでなく徐々に相手は膠着し、さらに進行していくと、その場から逃走するか/戦うかという状態(逃走/闘争反応状態)に陥りやすくなります。
本当は自分に優しくして欲しいと思って相手に怒りを表現したのに、返って相手から反発を招いてしまい、余計に「寂しい」「悲しい」感情が強まっていく状態になり、このパターンが続くと、やがて別れるというところにまで双方が追い詰められていってしまうこともあるのです。

人は幸せになることが大事な目標だと思うのです。
その幸せの脳内ホルモンは、オキシトシン(愛情ホルモンとか幸福ホルモンと呼ばれたりもしています)になります。
オキシトシンを脳内で発生させるためには、身近な人を幸せにしていくことが大事になります。
そのための第一歩は、自分自身が大事な人に対して『非機能的な「怒り」』のままにコミュニケーションしていないか?ここをセルフモニタリングしていくことが大事になります。
合わないことを合わせる努力よりも、今、合っている部分をより拡張していく方法の方が、愛着関係は良好になる確率は高まります。
愛着関係は、自分と他者との相互作用から生じます。
どっちが正しいか、間違っているか?とかは関係がないのです。
一隅を照らすことが大切で、自分自身の近くにいる人を大切にしていくことが重要ですね。