2022年11月30日水曜日

安全基地 → 社会性の順番が大事

養育において『安全基地 → 社会性』という順番を守っていたら、子どもは自尊心が守られて主体的に人生を送れるようになります。
母などの主たる養育者が『安全基地』として機能することにより、子どもが安心を抱き拡張していきます。
それが充足されて『社会性』を身に着けていきます。
そこで教育が大事になっていきます。
子どもに安心感を広げないで危機感を抱かせたり、苦手克服から入っていってもなかなか思うように成長しません。
返って子どもの反発を招いたりトラウマを生じさせたり自尊心を低下させてしまう恐れがあるということを共有しておきたいのです。
つまり、この順番がとても大事だということです。

また、親が子どもの『安全基地』になる4要素があります。

1つ目は、傾聴です。
お子さんが親御さんに話して来た際には、まず受容的、支持的に聞いてあげることが大事になります。

2つ目は、親がお子さんにアドバイスをする際には控えめにするということです。
関西弁で使われる言葉に「知らんけど~」という便利な言葉があります。
この言葉の裏には「決めるのは、あなたでいいのよ~」とか、「あくまで親としての一つの意見としてであって参考程度でいいのよ~」というメタファーが込められていると思います。
そうした感じで、親が子どもの主体性を尊重することが大事になります。

3つ目は、お子さんの『ややまし』なところに注目するということです。
どうしても一緒に生活していて、親は子どもの悪い所を少しでも良くしてあげたいと思うものです。
でもまずは、子どもに自信をつけさせること、自尊心をしっかり育むことを大事にしておきたい。
少しでも良い所を親が注目していると、子どもはそのままの自分でいいんだと安心して、その安心感を拠り所に成長しやすくなる。
そうしたら子どもは主体性が伸びて、成長してスキルアップしやすくなる。
ちなみに、僕は親に勉強しなさいと言われた記憶がないし、好きなように習い事をして、好きなようにやめました。
今でも勉強を継続的にしてますけど、やれと言われなかったので自分がしたいと思うことをやれてて、ありがたいです。

4つ目は、3つ目と連動しますけど、お子さんのダメなところは『スル~』です。
一緒に暮らしていると片付けができないとか、明日の準備ができてないとか「やりっぱなし~」が結構あるかと思います。
そこを治そうと最初から高い目標を設定してしまうと、親子の関係で緊張がベースになってしまいます。
そのダメなところの『ややまし』をみつけて、そこを褒めるという3つ目の介入を効果的にするために、ダメなところを『スル~』という感じです。

この4つを目指して、親がまず子どもの安全基地となっていければ、子どもは外で学んで成長していける可能性が高まります。
親の役割は成長させることより、安心を広げて心の拠り所になってあげて欲しいと思います。

2022年11月23日水曜日

正義の味方は、やっぱりアンパンマン!

 アンパンマンって、すごく画期的なヒーローだと思うんです。
まず、そこまで強くないし、というか、時にむっちゃ弱い。
そのため、仲間や支援者がいて成立するヒーローですよね。
そして、何よりも自分の価値観や考えを相手にも強要するということで生まれる善悪の対立構造でのヒーローではない。
利他の精神、自分の一部を相手にあげる。
自分が、相手を力で変えるのではなく、相手が今、必要なものを相手の立場になって考えて、相手の為に、自分ができることを考えて行動する。
バイキンマンに対しても突っ込みつつも、結局は共生してますしね。
バイキンマンの存在を否定しているのではなく、ダメな行為を否定しているだけというスタンスがすごいっす!

僕もいつか、アンパンマンみたい人になりたい。
でも、なれない~。
でも、自分の心の中にいる「リトルアンパンマン」を意識して生きていくことはできる。
だから困った時は、自分の中の「リトルアンパンマン」と対話しながら人生を送っていこうと思うのであります!

2022年11月16日水曜日

「早寝早起き朝ごはん」は間違っていると言いたい!

 僕は外来で、よくことわざや標語などを引用した心理教育をすることがあります。
しかし、「早寝早起き朝ご飯」という国民運動は、間違っていると言いたい!

その理由は、まず朝起きて脳が目覚めます。
そして、朝食を食べることにより、腹時計と脳の時計が同期します。
その後、16時間後に眠くなる体内時計がセットされるため早寝になる、という流れです。
そのため、早起き → 朝ご飯 → 早寝 の順番になります。

つまり、この国民運動推進の影響なのか?『早く寝ようとして、なかなか寝れません』『起きる時間がバラバラ』だったり、『朝ごはんは食べません』などを認めると、睡眠はフリーラン化して乱れて寝れないになります。

『「早起き朝ご飯早寝!」に変更して欲しい~』と願う、今日この頃の僕でした。

2022年11月9日水曜日

アロマザリングの重要性

 近年、虐待などがニュースで扱われないことがないですよね。
その度に、親の責任論が取り沙汰されている気がします。
母親の子育てに対する不安やストレスが膨らむ中、近年の核家族化や近隣との付き合いの希薄化により、煩わしいと思うような人間関係を無くす事との引き換えに、寂しさや孤立感を手に入れ母親たちは自分の子育てを振り返る機会を失い1人で苦悩することが増えている気がします。

しかし、人は生まれてから自立していくまでに、とても時間がかかる動物です。
そのため古来より、母親以外の人が子どもの世話を引き受けることを意味する「アロマザリング」によって、母親の負担を軽減し子どもの成長を育んできました。
昔から我々人類にとって「アロマザリング」はなくてはならないものでした。
同時に「アロマザリング」は、子どもの社会性の発達や、世話をする側が若い場合は子育ての学習という意味でも、極めて重要なものとなります。
つまり「アロマザリング」を介した母と子とその周囲の互恵的な関係をベースに、人は家族や社会を営んできたといえます。

それが、欧米文化や子育ての精神が輸入されたことを契機に、アロマザリングを活用した子育てが成立しにくくなり、母親のみに子育ての負担を負わせるケースが増えるようになります。
このような状況にあって、当の母親たちも「母親の役割」に対する意識を強めていくわけですが、イギリスのジョン・ボウルビィが発表した「アタッチメント理論」も、それに影響を与えていたと思います。

「アタッチメント理論」の基本的な考え方は、子どもには母性的人物への「くっつき(attachment)」を求める性質があり、それによって子どもは守られるというものですが、その理解にはいくつか注意が必要です。
まず、子どもが求める相手は必ずしも母親ではないこと。
また、親と子ども双方の互いに対するネガティブな情動を見落としがちであるということ。
そして、この理論がイギリスの個人主義的な育児風土で生まれたということです。

ところがこの後、当時の社会状況や日本の伝統的な母性観の上に、母親が愛情を尽くすことで子どもが健全に育つという認識が過剰に日本に広がってしまったのです。
「ニート」や「引きこもり」といった問題を抱える子どもあるいは若者の存在も「アロマザリング」と、それによる母子が適切に離れる時間が減ってしまったことと無関係ではないでしょう。
母親たち自身が今までの「母親の役割」にとらわれたままでは何も変わりません。
人は、赤ん坊の時から周囲の人々と関わる能力を備えています。

一方で、「アロマザリング」を可能にする子育てのネットワークを地域で再構築していくことも必要です。
あくまで母親はそのネットワークの一環であり、子どもは周りの人々との関係の中で健全に育つのです。
特に、発達障害を抱えた育児は、母親が抱えすぎてはいけません。
多くの使えるネットワーク(療育、放課後児童デイ、ショートステイ、学校などの教育関係者、福祉、医療機関、児童相談所などなど)を利用して欲しい。
幼少で発達障害と診断した際には、親御さんには「あなたの子ども」という認識から、「社会の子ども」だと思ってくださいと説明したりもします。
大人が育児や悩みを抱えている様を、子どもが学習すると、子どもも誰かに「助けて」と援助希求できない子供になってしまうこともあります。
その延長上に、ひきこもりやニートなど、自分で悩みを抱える症候群の連鎖が生じてしまいます。
どうか、大人も、しんどい時には1人で抱え込まないで「助けて~」と、フラッグを立ててください。
それぞれができる支援は確かに少ないですけど、支援も「3人寄れば文殊の知恵」的に、集まれば何とかなる気がしてきます。
当院も、その一部になれるようにと思って日々頑張っています!

2022年11月2日水曜日

愛着スタイルについて

アメリカの女性心理学者メアリー・エインズワースの分類によると、幼児期の子どもの愛着パターンは「安定型」「回避型」「抵抗/両価型」「混乱型」の4つに分類されています。

全体の6割程度は「安定型」の愛着パターンを呈します。
「安定型」は、1歳の乳児期の頃に母親から離されると泣いたり不安を示しますが、母親が現れると素直に再会を喜び、母親に抱かれようとします。

母親が安全基地としてうまく機能しており、ストレスを感じた際に適度な愛着行動を起こすパターンです。

「回避型」は、全体の1.5~2割程度で、幼児の頃に母親から引き離されてもほとんど無反応で、また、母親と再会しても応答が乏しいパターンです。
母親とのつながりが薄いケースに多いです。

全体の1割は「抵抗/両価型」は、母親から離されると激しく泣いて不安を示しますが、母親との再会で、母が抱き着こうとすると、それを嫌がします。
でも、一旦くっつくと離れようとしません。
これは、赤ちゃんの心の中の母親の安全基地が不安定で、親が構ってくれるときと、無関心なときの差が大きい場合や、神経質で厳しく過干渉な親の場合が多いです。
このパターンの子は、将来の不安障害のリスクが高く、また、いじめ被害にあいやすいとされています。

残りの1割程度は「混乱型」で、「回避型」と「抵抗型」が混じった「無秩序パターン」。
全く無反応と思ったら、激しく泣いたり怒りを表したりします。
親からの攻撃に恐れる反応を呈したり、逆に親を突然叩いたりすることもあります。
虐待を受けているような精神状態が、ひどく不安定な親の子どもにみられやく、親という安全基地が、逆に危険な場所となることで混乱パターンとなります。
親の行動が予測不可能なために、子どもの行動も無秩序なものになっています。

僕自身は、とても優しい母親と、ユーモアたっぷりで働き者の父親に養育されて、経済的には、中流家庭で、よい家庭環境で養育されたと思います。
そのため、愛着パターンは「安定型」に分類されると思います。
みなさんは、どのパターンに入るでしょうか?