2019年6月20日木曜日

「イラッ」としたら「6秒ルール」

人間のもっているさまざまな感情を表す「喜怒哀楽」という四字熟語がありますが、「怒り」は誰もが持っている自然な感情です。 
ただ、この「怒り」の感情というのは、一瞬の爆発力のようなものがあり、その爆発のエネルギーを解放したことにより後悔してしまった、という経験は皆さんも一度くらいあるのではないでしょうか?
もちろん自然な感情ですので、この感情自体を無くすことは、かえって不自然な状態になるわけで、この「怒り」の感情を、いかに上手にやり過ごすか、ということがとても重要です。

今回は、1970年代にアメリカで開発された「アンガーマネージメント」という心理トレーニングの一つをご紹介します。
この方法を意識すれば、誰でも怒りの感情をコントロールできるようになるといわれています。

まず、怒りの感情のピークは「6秒」といわれています。
ですので「イラッ」としたら、まずは怒鳴る前に心の中で、ゆっくり「6」まで数えます。
そして、例えば「大丈夫、大丈夫」「こんなことで怒ってどうする?」「どうってことない」など、心が落ち着くフレーズを繰り返します。

少し掘り下げて説明すると、私たちが怒っているとき脳内では「大脳辺縁系」という情動を司る部分が活発に働いています。
ものすごく簡単にいってしまうと、この大脳辺縁系が活発になると、「アドレナリン」という興奮作用のあるホルモンが分泌されるなど、体内で緊張した状態が生まれます。

実はこの反応は、怒っているときだけでなく、不安や恐怖などのピンチを感じたときに起きている変化と同じものなのです。
つまり、怒りとは、自分の身を守るために欠かせない本能なのです。
しかし、強い怒りに振り回されると冷静な判断力が低下し、衝動的な言動を取りやすくなってしまいます。
「ムカッ」となって怒鳴ったり、手を上げたりするのは、この脳の変化が起こしています。

しかし、こうした衝動的な怒りは長くは続きません。
大脳辺縁系の活性化を合図に、今度は、前頭葉が働いて激しい情動にブレーキをかけようとするからです。
前頭葉には、思考や創造性などの理性を担う部分があり、人間の情動をコントロールしています。
そのコントロールにかかる時間が「6秒」といわれています。
多くの人は 「6秒」 あれば、理性的な判断ができるようになります。
そのため、怒りの感情は 「6秒」 をピークに、あとは下降すると言われています。

頭に血が上るようなできごとに遭ったら、相手に言い返したり、行動を起こしたりする前に、この「6秒ルール」を試してみてください。



2019年6月13日木曜日

「精神科医という仕事をしていてどうやって心身の健康を保っているの?」という質問に対して自分なりに感じたこと

今回のブログは、最近、自分の住んでいる地域の方々と集まって飲み会をする機会があり、そこでの話題の1つをご紹介したいと思います。

日々の生活において、例えば仕事や家事、子育てなど、もちろんみなさんがとりまく環境や状況はそれぞれ異なる中で、ストレスを抱えていらっしゃる方も、たくさんおられる思います。
そんな時、『他の人は、どうやってストレス解消をしているのかな?』『どうやって、イライラしない状況を作っているのかな?』『あの人は、あんな仕事をしているのにストレスがたまらないのかな?』と、疑問に思ったことはないでしょうか。

その飲み会の席でも、おそらくそんな疑問をお持ちだった方が、会話の流れや精神科医の僕がたまたま居合わせた状況の中で、ふと話題にされ、ご質問をされたのだと思います。
「精神科医という仕事って、すごくストレスがたまると思うんですけど、どうやって心身の健康を保っているんですか?」と尋ねてこられました。

もちろん、精神科医という仕事が他の仕事と比べて特段ストレスがたまるとも思っていませんし、ストレスの質や量などは比べることなどはできませんが、改めて、その質問に対して自分でも考えてみました。

個人的に、心身の健康を保つために大事にしていることは、食事、睡眠などのバランスを大事にすることを大前提として意識しています。
そして、なかなか状況により難しいことが多いですが、診療(仕事)と休息のバランスをなるべく保ち、週末はできるだけ診療をせずに心身を休養するようにして、自分や家族のための時間に充てるようにしています。(最近、これもなかなかできなくなっていますけど。)
また、自分や自分の近い人(当院のスタッフ、家族、その関わっている方々)との相互の関係が少しでも良い状態に保てれるようにと意識することで、結果的に自分へのストレスを軽減しています。
一大決心でクリニックを開業し、最良のパフォーマンスを患者さんに発揮できるようにと、開業前に散々悩みに悩んで自分なりの今の診療スタイルになっているのも、もしかすると、このストレスというものとどう付き合って行くか、というのが当時の自分の中で大きな割合を占めていたのかもしれません。 

しかしながら、みなさんもご承知の通りこのストレスというものはこうしてるから万全というものではなく、恥ずかしながら、時々、患者さんから「先生、顔色悪いけど大丈夫?」「先生の方が、しんどそうやけど大丈夫?」と、<患者> ⇔ <医師> の関係が逆転してまう時もあります。
ですが、不思議とそれが一体感になり、治療的にはそこまで悪影響を及ぼしていないような気もしています。(本当のところは、どうでしょうか?)

でも、実際のところ自分が一番ストレスにそこまで悩まないでやってこれた理由は、やっぱり僕は、この精神科医という仕事が好きなんだと思います。
この仕事をしてて飽きたと思ったことはないですし、日々、診療でうまくいかないことがあると悔しい気持ちが襲ってきます。
それとは反対に、ちょっとでも患者さんに治療的に関われたな、と実感できたら自分のこれまでの生きてきた中で生じた罪悪感のような心のつかえのようなものが一瞬消えて何か満ち足りた気持ちになります。(ただし、一瞬で消えますけど。。。)


でもこれは医者が味わえる「おいしいところだな~」なんて思ったりもします。
その一瞬の爽快感というか高揚感のような感覚を何回も味わっていきたいから、それが一番の原動力であり僕が精神科医をしていてそこまでストレスを感じないところなのかな?と思いました。

『あれ?!お酒の席での会話なので楽しく打解けた雰囲気なのに、こんな感じで大丈夫かな?結局、真面目か!』
と思ったので、その飲み会ではもう少しざっくばらんな感じの回答になりましたけど。。。(笑)



2019年6月6日木曜日

人は常に変化しつづけている

人間は37兆個の細胞で出来ており、常に体のどこかで細胞分裂を繰り返しています。
赤血球は120日、内臓であれば2~3ヵ月、骨でも3年で細胞はそっくり入れ替わってしまうといわれています。
おおよそ7年も経過したら、すべての細胞は完全にリニューアルして別人?になっています。
すごいですね~。体の不思議!

ここから感じること、学ぶことは、僕にとって大きく2つあります。

1つ目は、人も含めて常に多くのことが変化をし続けているということです。
実際の治療場面でも、患者さんを診察していて「あなたは変われる!」と思って関わらせていただくと「小さな変化」にも気づけます。
そして、その「変化」を受容、共感しながら支援していくと、いつかは「小さな変化が大きな変化につながる」これを『さざなみ効果』と心理学的には呼んだりしています。

つまり、困ったときこそ、西川きよし師匠療法ですね。「小さなことからこつこつと!」
あなたは、変われる、変わりつつあるよと、気づいてもらうことのお手伝いができた時は、その声掛けは「言葉のビタミン」になります。
しかし、「また、やったの!」とか「あなたは、変われない、いつも、同じ失敗ばかりだ」と思って、こちらが関わると患者さん自身も自分は変われないと思い込んでしまいます。
そうなると、その声掛けは「言葉のウイルス」になってしまいます。
自分の診察では少しでも自分の言葉が、その人にとっての「ビタミン」になれるようにと思って診療をしています。

2つ目は、人間の考えている脳そのものも内臓の一部なので、結局、数か月で全部入れ替わるものだということです。
つまり、色々と脳で考えることよりも、体がその考えたことに対して反応するものに応じる方が正しいような気がします。
例えば、学校に行こうとすると胸の奥がつまるような気がする、会社に向かっている途中で泣けてくる、など、こうした体の反応やサインを受け止めて日々の判断をする方が頭で考えて判断するよりも正しい判断ができるときがあるということです。

僕は、体と対話したら「ワクワク」したので、1年9ヵ月前に『さくメンタルクリニック』を開業しました!