2022年2月23日水曜日

昨年のメンタルクリニックの放火事件で感じたこと ②

昨年末の梅田のメンタルクリニックの放火事件で、犯人のことで僕が考えたこととして、犯人は放火事件の前に、過去に自身の家族に対しての殺人未遂事件で刑務所に服役していたとのことでした。
今回の残忍な事件では、被害者や亡くなられたご遺族、社会的な想いとして、犯罪を起こした人間に反省を促したいと思うし、再犯を防止させたいと思いますよね。
ということは、刑務所の役割って、そうした受刑者の更生を支援する場として重要だと思うんです。
でも、今回の事件を起こした犯人は、刑務所で更生できなかったということになりますよね。

これをきっかけに、刑務所で、どんな更生プログラムを組んでいるのかが気になり、「反省させると犯罪者になります」(岡本茂樹著、新潮新書)を読みました。

この本を読んで僕が感じたことは、犯罪者の多くは幼少から抑圧を受けて養育されている。
つまり、「べきべき養育」を受けている。
ちゃんと親の言うことを聞いて実行したら、親からは、よしよしと褒められる。
親の言うことに従わなければ、親からヒステリックに怒られるみたいな「抑圧」をかけられる養育のことを、僕は「べきべき養育」と呼んでいます。

子どもの心は、本来は自由で快活にできている。
でも、そこに親からだったり、学校でいじめられたりなどの迫害体験を受けて、また、そうなっても頼れる人がいなくて、自分の気持ちに「抑圧」をかけることが習慣になっていく。

犯罪とは、その「抑圧」の反動としての爆発の最終形態という形で生じてくるものだと思います。
犯罪を起こした人は、刑務所で服役することになりますが、そこでさらに受刑者に「抑圧」をかけて猛省を促そうとする。
結果的に、彼らは本当の気持ちに服役中も「抑圧」をかけて生きていくため、真の更生になっていかない。
本当に反省を得るためには、逆説的ですけど犯罪を起こした本人自身が「幸福」にならないといけない。
本人が幸せを感じたり、自分の心の抑圧が解除されてこそ、自分の心の中にある罪悪感と本当の意味で向き合えるのです。
他者から外圧的に圧迫して得られる反省は、むしろ本当に獲得して欲しい反省とは全く異なるものとなってしまうのです。
この事件を契機に、ただの表面的、技術的な反省を獲得する方法ではなく、真の反省を獲得する方法、戦略を普及していったり、対人交流において、抑圧を生じさせない対人関係理論がより普及して、親子関係、夫婦関係、社会上の対人関係が良い循環になっていけるようになればいいなと感じています。

2022年2月16日水曜日

昨年のメンタルクリニックの放火事件で感じたこと ①

昨年の年末に、梅田のメンタルクリニックで放火事件が生じ、スタッフや患者さん、犯人も含めて多くの方がお亡くなりになる凄惨な事件がありました。
僕自身は、そのDrと特に面識などはありませんでしたが、紹介状などでのやりとりなどは何度かあり、また同じ大阪精神科診療所協会の協会員であることなどもあり、身近な事件として受け止めました。

僕自身、開業する前は精神科の病院で勤務しており、そこでは精神科医として、強制入院や隔離、拘束などの行動制限などをするため、患者さんから暴言を吐かれたり、正直ハラハラすることは、幾度と経験はしました。
ただし、このような事件になるような経験はありませんし、例えば、患者さんから殴られたなどの経験もありません。
あくまで、暴言程度までです。

開業して5年目になりますが、当院の主な患者さんの多くは再診の方が中心で、また児童精神科を専門にしていることからも、女性とか子どもの患者さんが多く、開業以来、そうした目立ったトラブルなどは幸い生じておりません。

この事件で、どうしても偏見などは持たれる可能性はあると思うのですが、僕は、精神科医になり14年目になりますが、一度も殴られたこともないし、身の危険を感じたことはありません。
勤務医として、強制入院とか、隔離、拘束などの行動の制限をするなど、患者さん自身も追いつめられて、それによって怒鳴られたり、暴言を吐かれたことはある程度です。
これだって、僕も患者さん自身の立場なら、それくらいはしますし、それに、ほとんどの患者さんが、その後、落ち着いた時には、和解できて治療関係を構築できていますので、安心していただければ幸いです。

2022年2月9日水曜日

イライラと向き合うこと

大谷翔平選手が、昨年の大リーグの試合で納得いかない判定を審判にされて、自分自身がイライラしたのを感じて「自分はまだまだだな」と反省したというエピソードがありました。
大谷選手のように自分の心の中にあるイライラを感じて、そのイライラを自分で処理できるようになることが、対人関係をよくする上で最も大切なことだと思います。

例えば、若いカップルがデートの待ち合わせをしていて、彼女が待ち合わせの時間になってもなかなか来ず、彼氏がずいぶん長い時間待ちぼうけをくわされていたとします。
ようやく遅れてきた彼女に対して、彼氏が「遅いやん、何しててん!」と怒鳴ったことがきっかけで、彼女と口論になりました。

もしここで、彼氏が怒鳴らずに大谷選手のように自分の心のイライラを処理して、さらに相手に対して素直に「寂しかった」「最近、僕と会うことを前みたいに楽しみにしてないんじゃないか?と不安になった」と気持ちを伝えることが出来れば、もしかすると、彼女も「寂しい気持ちや不安な気持ちにさせてごめんなさい。」と素直にいえたかもしれません。

イライラを相手にぶつけることが、最も対人関係を悪くさせることもあります。
そのイライラを大谷選手のように処理できるようになると、多くの対人関係は良好になり、その積み重ねが世界平和にも繋がっていくと思います。


2022年2月2日水曜日

支援者自身の心身のコンディションが最も大事!

僕自身、精神科医である前に只の平凡な人間なので、心身のコンディションがあまり良くないときもあります。
そのような心身のコンディションがあまり良くない時の診察では、時に僕と患者さんとの間の関係性も不安定になることもあります。

診察室以外でも同様です。
僕の場合は、僕自身の心身のコンディションが良好な時とそうでない時とでは、いわゆるプライベートな身の回りとの対人関係にも影響します。

自分の心身のコンディションを良好にしておくためにも、勇気を出して休む、ほどほど、ぼちぼちが大事ですね。
時には頑張らないことを頑張ることも大事だと思います。