2020年3月26日木曜日

親御さんからの質問で、自分の子供時代を思い出しました

新型コロナウイルスの感染拡大予防で全国的な小中学校の臨時休校が続く中、診察室で子どもたちに「どう過ごしている?」と訊くことに何となく複雑な思いと違和感を感じながら、子供たちの回答を待っていると「ゲーム、ユーチューブ、スマフォ~」という感じで、外出の自粛も求められている状況で多くの子供たちはエネルギーを持て余している感じがします。

世相的にみてもそうですが、スマートフォンやタブレット端末に触れる時間が増えているなか、親御さんたちからこういう質問をされることがしばしばあります。
「いくら言っても勉強はちょっとしかしないし~、どうやったら子どもは自分から勉強するようになりますか?」

これはなかなか難しい質問で、どうしても自分の経験というか、自分が子どもの頃はどうだったかな?と、自分の子供時代を思い出してのことをお話しするというかたちになってしまいます。
しかし、自分の子供時代を思い出してみると、親に「勉強しなさい」と言われた記憶がほとんどありませんでした。
それを親御さんに伝えると、「それは先生は言われなくても、自主的に勉強してたからでしょう~?」と言われます。

何の自慢にもなりませんが、僕は、子どもの頃はそんなに勉強はしていません。
ただ、僕の両親は、僕がサッカーを習いたい、塾に行きたいと言ったら、行かせてくれました。
せっかく「行きたい」と言って行かせてくれた習い事を数ヶ月で「やめたい」と言ったら、それも、やめさせてくれました。

今振り返り考えてみると、とにかくやりたいようにさせてくれていたように思います。
両親は共働きで、それに末っ子である僕には「自由にやりたいようにしてくれたらいい」というスタンスだったのかな?とも思います。

高3の進路選択の時に医者になりたいと言い出して、その後3年間も浪人生活をさせてもらいました。
僕のしたいと言ったことを、親は不安そうな眼差しで、でも、いつも両親は応援をし続けてくれました。

残念ながらといいますか、力及ばずといいますか、親御さんたちの「どうすれば子供が自発的に勉強をするようになるのか?」という質問に対する明確な回答は持っていませんが、僕個人がその質問をされ、僕が親にしてもらったことといえば、勉強をする環境を整えてもらい、信頼し見守ってもらっていたな、と思います。
それは今でこそ、そう感じ表現できますが、子供の頃は到底その親の気持ちを察することなどできませんでした。
成長していく中で、 何となく信頼して任せてもらっていることに気付き、何となくその期待にこたえようと自発的に思えたような気がします。

僕が、浪人時代も家で勉強した姿をほとんど見ていない両親でしたが「勉強しなさい」と言わずに見守ってくれていた親と同じように、親となった今の僕も出来るのだろうか?と考えることもありますが、僕が精神科医になったときも、さくメンタルクリニックを開業したときも、親には事後報告になってしまいましたが、今でも変わらず応援してくれています。 



2020年3月19日木曜日

誰のためか

どうもお久しぶりです。
ブログを久しぶりに更新します。

さて、唐突ですが、毎日診察室で患者さんと 向き合っている日々の中で、自分にとって「働くということの意味を考えることがあります。
そのような時に自分にとって支えになっているエピソードの一つで元シアトルマリナーズのイチロー選手とソフトバンクの王貞治球団会長との鮨店での一場面があり、それを今回は紹介させてください。

鮨店での会食で、イチロー選手が王監督に、
現役時代、選手のときに、自分のためにプレーしていましたか、それともチームのためにプレーしていましたか
と訊ねたそうです。

すると、王監督は即答したそうです。
オレは自分のためだよ。だって、自分のためにやるからこそ、それがチームのためになるんであって、チームのために、なんていうヤツは言い訳するからね。オレは監督としても、自分のためにやってる人が結果的にはチームのためになると思うね。自分のためにやる人がね、一番、自分に厳しいですよ。何々のためにとか言う人は、うまくいかないときの言い訳が生まれてきちゃうものだからな
イチロー選手は小さな声で「ありがとうございます」と言って、頭を下げたそうです。

このやりとりを聞いて、僕自身は楽になりました。
僕自身のこのやりとりでの理解として、働くということの基本は、まず自分のためだということです。
自分を大切にして、その周囲の人を大切にして、その延長線上に社会的に働く、役に立つという理解です。

診察場面で、患者さんの中には自己否定感情が強く、自分は働いていないし世の中の人に役になってないから生きる価値がないんですと話されることがあります。
僕は、患者さんには「自分を大切に思う気持ちが、ちゃんとあなたの中で芽生えてくるまでは、働かないで欲しい。自分を大切に思えない人が、働くのは、逆に危険です。」と返答することもあります。
働き方は、あくまでも自分を中心に考えて自分と向き合う。(それはもちろん、自分の生活のためでもあり、自分の家族のためでもあります。)
僕自身においても、あくまで自分のために仕事をしていると考え、自分が納得のいく診療をしたいと思っています。
それが結果的に、患者さんの役に立てると信じています。
同時に、僕は治療者として自分の伸びしろに期待しています。
これからも少しずつですけど、治療者として成長していきたい。
でも反対に、自分の技量が落ちたり、治療の質が低下したら、自分で判断してやめたいと思います。
それも、あくまで自分のためにです。