2023年4月26日水曜日

僕自身も誰かの安全基地になろうとして、相手から安全な居場所を得ている

 愛着というものが、すごく人生において重要な役割を果たしていることは、これまで何度も述べてきましたが、それと同時に、愛着というものが見えづらく、霞んでしまいやすい時代なんだとも思います。

 人は幼少から親に愛されて、安全基地を獲得し、それを内在化させて、社会活動をしていく。愛着に不安定なものを抱えている人は、どうしても、相手にも100%の理想を望んでしまう。そうなると、相手が理想の99%だったとしても、その1%が気になって幸せや安定した関係になれない。相手が、理想の50%であっても、その50%に感謝できるようになることが幸せになるためには必要なことなんだから。それに、深い愛着の傷に苦しんだ人は、配偶者や恋人、周囲の人、治療者やカウンセラーに、どんなに支えてもらっても、それだけでは不十分なのです。

 自分が、どんな存在であれ、誰かの支えになるということ、親のように愛情を注ぐ体験をすることが、その人の中で眠っている愛着の力を活性化させる。支えを必要としている存在を支え、守らないではいられないという本能を目覚めさせることが重要です。それこそが、母性や父性の本質です。僕自身、家庭では家族を、社会では患者さんやスタッフを支えようとして、逆に支えられているという実感があるのですが、それはそういうことなんだと思う。

 安全基地に、自分がなろうとして、逆に相手から安全な居場所を感じることができている。いい循環だし、それはお金では買えない。お金では買えないものこそ、プライスレス!

大事にしていきたいものですね。


2023年4月19日水曜日

正しい成長は、身近な人に優しくなっていくんだろうと思います。

 僕は、プロ野球が好きで、今回のWBCは、とても楽しくまた学びも多かったです。

 大谷翔平選手は、能力的にも成長していっているけど、精神的にも成長し、本人の周囲の人たちを含めて多くの人が、彼を通して楽しい気持ちになりますね。

 正しく成長していくと、強くかつ優しくなるんですね、周囲に。正しい学びや成長をしていくと、その人の身近な人に優しくなれるんだと思います。

 自分はそうなれているかな?ちょっとまだまだですね。WBCを通じて、正しく成長していけば身近な人に優しくなれて、その延長に平和な社会があると思いました。

 

2023年4月12日水曜日

発達障害臨床と社会

 422日(土)に、当院主催で講演会をする予定です。「発達障害のリアルな理解と支援」という題目で、当院の顧問カウンセラー上野大照先生が演者、司会は僕が担当します。

 発達障害、特に自閉スペクトラム症の特性を極端に説明すると「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いこと」です。(自閉症スペクトラム、SB新書、本田秀夫著より)

 さらに略すと、自分の心の中に、他者の心が先天的に乏しいということになると思います。そのため、発達障害を抱えた児童らの周囲の関わりとしては、なるべく「自由」と「信頼」を提供して、本人自身が「暇な状態」と「緊張が少ない状態」の環境にしてあげることで、主体的で真にやりたいことに取り組めるようなマインドに育っていくことが重要になります。そうした環境を調整することで、主体性が伸びて、成長していき、社会上の適応が良くなるという流れが大事になります。反対の関わりとして、発達障害を抱えた児童の養育過程で、悪化させてしまう関わりが、周囲に合わせる努力を最優先させることを大事にして「義務」「責任」を提供していくことになります。そうなると、短期的には「定型発達の人」のマネをして、カモフラージュで頑張ることもあるだろうけど、内的には空虚感を抱き、長期的には希死念慮とか精神疾患を生じるようになることもあるのです。そこで、周囲は慌てて優しくなる。こういう後手後手の関わりになるのは、できるだけ避けたいのです。できるだけ発達障害のリアルな理解をして、実践的な知識を獲得していき、できるだけ理解と尊重を提供できるようにサポートしていく。そういう役割を、児童精神科医、精神科医として、毎日2歳から80歳の方の診療をしている僕にはあると思っています。

 発達障害のリアルな理解と支援が、広がっていく社会は、真に平和な成熟した社会になると思います。我々、祖先の先人達の想いは、平和で争いのない、みんなが思いやりの心を持って助け合う、真に成熟した社会を目指していたのではないでしょうか?

 一方の考え方として、「発達障害は、自分勝手や~」とか、「発達障害があろうと、なかろうと、もっと相互に思いやりを持って~とか、特別扱いはしません~、言い訳に過ぎない~、そんなん社会で通じないで~」とか散々、批判されてきている部分もあろうかと思います。そうした考えは、戦争とか有事とか危機的な状況では、確かに、マッチしてくる考え方なんだろうと思います。平和を目指すのか?戦争を目指すのか?それによっても、精神科医療の方向性は変わってきます。

 結局、人は、人生という修行を通じて、成長していき「他者をゆるせるようになる」「自分をゆるせるようになる。」それこそが、人生をかけて目指す価値があることだと故日野原重明先生(聖路加国際病院名誉院長などを歴任した医師)が述べておられました。できれば、僕自身も医師として、平和を目指して努力していきたいし、そうなれるように力を出したいと願って講演会を開催したいと考えています。

2023年4月5日水曜日

子育ては、信頼と楽観が大事!

 ディズニー映画「アナと雪の女王」は、育児などの親子関係にすごく参考になります。魔法の力を持って生まれた長女のエルサが、次女のアナを魔法の力で怪我させてしまい、そこから、両親はエルサに対して「恐れ」「不安」を抱き、エルサに対して「監視」「管理」的な関わりになっていきました。エルサ自身も、両親と同様に自分自身に対して「不安」「恐れ」を抱き、双方ともに、恐れがエスカレーションしていく自体となり、エルサ自身がひきこもる状態で長い年月が経過していきました。妹のアナは、楽観的で明るい性格の持ち主でした。(これも、アナ自身が生き抜く上での適応だった可能性はありますが。)妹のアナは、姉のエルサに対して、必死で「あなたなら、何とかできる」と不安や恐怖を抱えながらも、信頼と愛情をエルサに届けます。その結果、エルサ自身も、自己受容の段階に進むことができて、これまでの「カモフラージュ」してきた生き方から、「自分らしく」生きていくという、「自己否定」から「自己受容」という大転換が生じたという感動の物語でした。

親も、子どもの養育過程の中で、「不安」や「恐れ」を抱くと「監視」「管理」をしていくこともあろうかと思います。しかし「不信から生じたものは、不信しか生まない。」と思います。やはり、自分の子供を信じてあげて、「信頼」を贈ってこそ、「子育て!」そう思って、またアナ雪を鑑賞してみましょう。アナのように、信頼を贈れるように、僕も「親」として、子どもを文字通り「木の上に立って見守りたい」と思います。