2023年6月28日水曜日

精神科領域で一番大切なライフステージは、10歳から18歳

 僕は、日々2歳から80歳台の老若男女の患者さんを診療していて、精神科医として、人生のライフステージで一番大事な時期は、10歳頃(小4)から18歳(高3)の時期だと思います。特に、発達障害の特性を有する児童にとっては、この年代の頃に、意識する・しないに関わらず、周囲と自分との違いを、顕著に感じ始めます。この時に、医療機関で発達障害と診断されたり、心理教育などをする中で

「周囲と合わせることを過剰に大事にするのではなく、自分という個性やユニークさを、自分自身が受容し主体的に人生を送れる」ようにサポートしていく。

これができれば、親や我々支援者も、ほとんどの役割が果たせたと思っています。そこを無事に通過できれば、その後、本人自身がやりたいことがみつかって主体性が高まり、成長し、社会的な成功を目指して、オンリー1ナンバー1を目指したらいいですし、そもそも、そこは、本人の人生であり、親や精神科医の役割ではないと思っています。そして、一番きついのは、この10歳から18歳の頃に、周囲の大人たちが、周囲と合わせることを強要し、そこに本人自身が、多くのエネルギーを使ってしまうことです。

 この時期に、「自分の人生なのに、相手にとってどうか?」を重視して生きていくと、精神科的には「過剰適応」になって、自分の人生の主人公を、自分以外の誰かに乗っ取られてしまうのです。

そうなった後に、自殺念慮とか、うつ状態になって受診に来るのを、僕は予防したいのです。そうした分岐点が、10歳から18歳頃に来ることが多い。親や周囲の大人たちは、子どもの支援者であって、支配者にならないように。特に10歳から18歳のライフステージでは、気をつけましょう。

 木の上に立って見守ると書いて「親」という由来からもわかるように、親は子どもを成長させる存在ではなく、子どもの成長を見守る存在なんだから。

2023年6月21日水曜日

生物学的に重要なライフステージは、生後9か月から3歳

  生後まもない時の脳重量は、400gで、1歳で、800g3歳で約1000gにまで成長する。成人の脳重量は、約1400gなので、3歳までには、かなりの脳構造は規定されていく。

その間に、神経細胞の繋ぎ目であるシナプスの数は生後13年前後まで増加の傾向にあるが、その後は過剰に生産されたシナプスのうち不要なものが削除されていくことから減少の傾向をみせる。

こうした変化は、事前にシナプスを過剰に形成した後に必要に応じて減少させていく方式をとることで周囲の状況に敏感に対応できることから生じている。そのため、人が生物学的な意味で、とても重要な時期が、生後9か月から3歳頃で、この間に養育者が、安定しない状態だと、正常な脳の発達がしにくくなる恐れがあります。この間をいかに、愛着対象者と赤ちゃんとの安定した愛着形成ができるかどうかが重要になります。

 「3つ子の魂、百まで」という言葉には、賛否両論あるかと思いますが、結構重要な時期だということは、昔からわかっていたということなのでしょう。

2023年6月14日水曜日

トラウマティックボンディング

  上記は、日本語訳では「心的外傷性絆」と呼ばれています。これは、例えば拉致監禁されて、被害者が加害者について考え続けることで、加害者に対する怒りや憎しみだけでなく、好意に似た感情を持ってしまうことです。

 これは、養育環境でも、親に対して「ここで生きていくしかない」という状況に置かれた子どもは、親を善人化してしまう。そのため、思春期、青年期になって、親に対して受けた心の傷に対して、親を責めてもいいのに、そうできずに、子ども自身が、親の期待に添えなかった自分が悪いと自分を責めてしまう。

 子どもの頃、過剰適応的に「いい人」でないといけないという強迫心理には、そうしたトラウマティックボンディングが背景にあることを知っておく必要があると思います。その上で、そうしたしんどい家庭環境で育った子ども自身が、そうした家庭環境で、

自分は被害者であったし、当時は無力だった。まずは、自分を責めなくていいんだ」

と思ってもらいたい。そうした援助が、必要な人は、案外たくさんいるという印象を抱いています。

2023年6月7日水曜日

金剛山からの金言②

 前回のブログでも述べましたが、今年のGWは、大阪の最高峰「金剛山」に登山に行ってきました。下山の途中、膝がプルプルして、普段の運動不足を痛感しました。下山の時に、目についた石碑には、

「ひとつふたつみつ不幸の数を数えるより、幸せの数を数えてみよう」

山登りをすると、心も体もリフレッシュされます。日々の生活を見直し、日々の生活に感謝して、またGW明けから、やっていけそうです!

 金剛山、ありがとうございました。