例えば、妻が、夫に、「あなたは、人への思いやりがないわね」というと。言われた夫は、本当に、思いやりがなくなってしまう。妻自身は、こうした否定的な発言を相手にぶつけることで、相手が反省して、行動変容を促したいという意向があるのでしょう。その意向とは、反対に、本当に思いやりがなくなってしまう。
こうしたコミュニケーションパターンを、診察場面で、よく耳にします。やはり、言葉が、言霊になって相手に飛び込んでしまう可能性があるのです。怒りが生じたまま、それを相手にぶつけてしまうと対人関係は、不良になってしまうので、一呼吸置いて、怒りを処理してから、素直な気持ちで人と関われたらいいんですけど。それが難しいからこそ、まずは、受診とかカウンセリングなどで話してもらって、自分自身の素直な気持ちを出せるようになることが大事ですね。
診察室で、お母さんが、子育てで、「ヒステリックに怒鳴ってしまうんです~。」と相談に来られることがあります。でも、その背後にある愛情深さを、何よりも、僕は支持し、労います。その上で、「そうした愛情が、子どもにいつかは伝わりますよ、そう僕は信じています!」とお母さんを励ますこともあります。結構、その後の診察の経過で、お母さんは、相変わらず怒ってはいるけど、なんか、母と子の間の空気感は、以前に感じた緊張から、何か愛みたいな温度感を感じることがあります。
行動は、変わってないけど、叱ることも愛だという言葉に、行動や伝わり方に、変化が生じたのかもしれません。僕が、お母さんに伝えた、「愛」という言葉が、母も気づかれて、それをお子さんに、怒るという関わりで、愛を伝えたのかもしれません。