僕は精神科医として、若い頃は患者さんに正しい関わりをすることが有効なサポートになると信じて診療していました。
そのため、精神科医として駆け出しのころは、気がつくと、患者さんやそのご家族に対して、結果的に説教をしていることが多かったのです。
そんな時、指導者に「先生は、よい治療者に向かって努力しているのはわかる。だけど、本当に、よい治療者って、各々の患者さんに、治療者自身が柔軟に合わせることができる治療者こそが、本当によい治療者だと思うよ」と指摘されました。
その時、自分の中の思考が劇的に思考転換し、その日は衝撃で寝れませんでした。
それ以降、説教外来がいかに患者さんにとって侵襲的で無効な関わりだったかということを反省しました。
現在も精神科の診療で大切な支援は、患者さんを少しでも楽にできるかどうか、その有効性のためには自分の価値判断を柔軟に変えられるかどうか?をセルフモニタリングするようにしています。
それが、なかなかできないんですけどね。
患者さんを治療するというよりも、治療者自身の心を治療者自身が向き合うというしんどい作業をすることが、精神科医にとっては大事だな~と日々感じつつ診療しています。