2020年4月16日木曜日

落ち着くことの大切さ

人生、山あり谷ありという言葉がありますが、人の人生には波があります。
誰しもが紆余曲折あり、上昇、下降を繰り返し経験して日々生活していることと思います。
精神科に通院されている方の多くは、人生の谷の部分、やや下降傾向にさしかかった時に受診されることが多いかと思います。

新型コロナウイルスの影響により、まさに谷の部分と感じておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本だけでなく、世界中が未曾有の不安を覆う中で、先日、緊急事態宣言の発令がありました。
色んな情報が錯そうし厳しい状況が続く中、個人的にも日本人の一医師として、また地域の開業医として新型コロナウイルス関連の情報は注意深く追っている日々が続いています。

現状までの経緯の一部分をものすごく簡単にまとめると、日本の人口の約1億3千万人の内、約1,000人程度の方がコロナウイルスに罹患した段階、つまり、それが多いか少ないかは別にして約13万人に1人の方が感染した状況で、全国一斉に学校が休校になり、総理大臣が不要不急の外出を控えるようにという判断をくだしました。
勿論この判断をどう思われるかは人それぞれで、皆さんの状況や立場、経済的な側面など、色んな影響を少し考えただけでも枚挙に暇がありません。

ここからは職業病とでもいいましょうか、あくまで問題対処の方法論として、精神科医の僕が個人的に感じたことですが、仮に新型コロナウイルスの感染が減少傾向になったら、この総理大臣の判断は心の問題対処にも似ているな、と感じました。
もしかすると、心の状態が下降線となったことがきっかけで当院に受診されることになった患者さんと、この判断により新型コロナウイルスが減少傾向になった場合の下降線の曲線は似ているかもしれません。

問題対処の方法の一つとして、無理して頑張るよりも、しっかりと休息をとり、より下降線に落ちていくことの方が、治りが早い場合があるということです。
もちろん、これは各々の状態やケースによって違いますが、それを「落ち着く」ということなんだと思います。
この「落ち着いている状態」を精神科的には治療期間というのであって、そこをちゃんと理解し休養することを本人自身も受容していく方が、結局は回復が早くなるケースがあります。

ところが患者さんの中には、できるだけ早く回復をしようと焦ってしまい、折角、休養という選択をしたにも関わらず「本当は休養なんてしている場合ではないのに」とか「こんな時に休養するなんて何てダメなんだ」というふうに自己否定や、他者否定が強まり、心理的な緊張が強まっていくことがあります。
自宅で休養していても、心理的緊張が高い状態、いわゆる「精神的過労」の状態で経過しているため、患者さんの中には回復軌道に乗っていかないといった状態を呈しておられる方もいます。

不要不急の外出自粛要請での近いケースを想像すると、気持ちが先行して外出をしてしまい、最悪の場合、新型コロナウイルスに感染してしまう結果となると目も当てられない状況になってしまうばかりか、感染させてしまう状況にすらなってしまう可能性を感じています。

こういった経験を踏まえて、こういう時こそ、徐々に落ち着いていくことを切に願いながら、まずは「落着き」「頑張らないことを頑張る」ということを少しだけ意識してもらえれば、と応援させていただきます。