2023年10月18日水曜日

運転手は、車酔いしない理由

 こどもが夏休み期間に、お墓参りに家族で行ってきました。墓参りは、山道を僕が車で運転し、僕の粗い運転技術により、僕以外の同乗者の家族全員が車酔いをしました。

 そもそも乗り物酔いは、耳の奥にある体の平衡感覚をつかさどっている、三半規管のリンパ液が乱れることで起こります。「運転している人は車酔いしにくい。」と言われていますが、これは、運転手は自然に車の 進行方向を意識できているためです。当然、運転手は運転中に頭を頻繁に動かしたりよそ見をすることはありません。加えて、自分の意志でハンドルを切っているため、平衡感覚が乱れにくく、「前に段差があるから揺れる」「次はカーブがあるから体が傾く」などの、目から入ってくる情報から予測・判断ができるため、情報のずれが生じません。ここに、運転している人は車酔いしにくいと言われている理由があるのです。

 一方同乗者は、基本的にずっと前方を見ている運転手と違い、周囲の景色などを見たり、他の同乗者と会話をしたりと、頻繁に頭を動かすことになります。その結果、三半規管のリンパ液が乱れ乗り物酔いを誘発することになるのです。

 精神科医的には、「運転と人生は似ているな~」と思いました。自分の体を車で見立てると、周囲の人はどうかを意識してばかりいたり、何らかの理由で、運転手が、他の誰か(親だったり、上司だったり、世間一般だったり)に奪われてしまう。そのことによって、不安、抑うつ、心身症状、自我障害を起こして幻覚妄想状態になることもある。これは、運転でいうところの車酔いと似ているのかもしれない。自分の人生の運転手である、自分自身がしっかり主体的に運転し、自分の思ったように進んでいけるようになると、車酔いのような症状は改善するでしょう。

 僕の家族の皆が、墓参りで車酔いしている時に、自分の運転の粗さを反省するよりも、そんなことを考えていました。次回から、もう少し丁寧な運転を心掛けたいと思います。