上記は、日本語訳では「心的外傷性絆」と呼ばれています。これは、例えば拉致監禁されて、被害者が加害者について考え続けることで、加害者に対する怒りや憎しみだけでなく、好意に似た感情を持ってしまうことです。
これは、養育環境でも、親に対して「ここで生きていくしかない」という状況に置かれた子どもは、親を善人化してしまう。そのため、思春期、青年期になって、親に対して受けた心の傷に対して、親を責めてもいいのに、そうできずに、子ども自身が、親の期待に添えなかった自分が悪いと自分を責めてしまう。
子どもの頃、過剰適応的に「いい人」でないといけないという強迫心理には、そうしたトラウマティックボンディングが背景にあることを知っておく必要があると思います。その上で、そうしたしんどい家庭環境で育った子ども自身が、そうした家庭環境で、
「自分は被害者であったし、当時は無力だった。まずは、自分を責めなくていいんだ」
と思ってもらいたい。そうした援助が、必要な人は、案外たくさんいるという印象を抱いています。