僕は診察室で、夫婦関係や親子関係、仕事など、対人関係の悩みの相談を受けることは珍しい事ではありません。
その中の一例ではありますが、夫である患者さんが、妻に対しての関係修復のために「ありがとう」といつも伝えているのに妻は変わらないとか、親御さんがお子さんに対して「私は結構、息子を褒めているのに~。息子は全然変わらないです。」という悩みを相談されることがあります。
感謝や賞賛をする際には「ありのままのあなたでいい」「そのままでいい」が、メッセージの土台としてあります。
おそらく、そこが十分に伝わらないままだと、相手にとっては操作性を感じるのかもしれません。
操作性とは「ありがとうと言ったんだから、あなたも私に優しくなりなさい」とか「褒めたんだから、いい子になりなさい」「褒めたんだから、仕事でもっと感謝を忘れないで働きなさい」という相手に対しての変化への期待です。
しかし、それは相手に対しての期待というよりは、怒りや不信感といったものを、受信者側は察知してしまい、相手からの圧を感じて、発信者側も、受信者側も双方の関係が問題のまま維持されてしまうという悪循環となっているように感じることがあります。
ただ、これは失敗ではありません。
『ありがとう』というメッセージを伝えようとしたんだから、最初のステップは踏んでいるんです。
『ありがとう』『偉いね』という言葉が、より純粋に伝わるには、めげないで続けていくことが大切です。
不完全な人が、親が、上司が、不完全な相手(子供や部下に対して)に何とか真摯に関わろうと頑張っているわけですからね。
いつか、その「ピュアな想い」が相手に伝わるように、僕は、診察室で応援したいと思っています。
だからこそ、僕自身が、よく診察室で患者さんに伝えるのは「そのままでいい、よく頑張っている!」です。
変わらないことが、もっとも人は変わりやすい。
人から変われと否定されて変わるのは、しんどいですからね。