2022年10月26日水曜日

自閉スペクトラム症と愛着スペクトラム症

この10年程度診療する中で、複雑化、長期化、慢性化する精神疾患の背景に、自閉スペクトラム症(ASD)が背景にあることを意識し、そこの知識や支援を念頭に置くことで、適切な支援がみつかることが多いと感じ学んできました。

その上で、難治的、通常の治療の枠組みでは、なかなか改善しにくい傾向のある患者さんの多くに、愛着スペクトラム症が併存していることが多いことが分かってきました。
ここでいう、愛着スペクトラム症とは、はっきりとした虐待を受けてきたなどというよりも、子ども時代に、主に母親との関係性を通しての、心の安全基地が育まれなかった状態で現在に至っていることをいいます。

精神医療では、愛着や愛着障害が種々の精神疾患の成因や回復において、どれほど大きな役割を果たしているかということに十分な認識や対処の術をもっていないのが現状だと思います。
僕は、児童精神科、精神科を標榜し、毎日2歳から80歳までの老若男女の診察をしているうえで、不安定な愛着スタイルの影響が、その後の人生に大きく影響しているということを感じています。
ベースに、愛着スペクトラム症の影響の有無を念頭に、当院でできることを考えていきたいと思っています。