2018年10月4日木曜日

子どもが、失望を乗り越える支援

下記はあくまで仮想の患者さんと親のやりとりです。そこから大事なエッセンスをとりあげたいと思います。

詳細は、エックハルト・トールの「子育て」の魔法 スーザン・スティフェルマン著、徳間書店、1800円(税別)を、参照してもらえるとありがたいです。

A君は、不登校が長期化し、家で傍若無人になり1日中ゲーム三昧で、自分では変えられなかったり思うようにならないことがあると直ぐに感情を爆発させてしまいます。
A君が、不登校だったり、自分が発達障害などがあることをあるがままに受け入れられるようになるには、

【拒絶】⇒【怒り】⇒【交渉】の3つの段階の末に ⇒【失望】⇒【受容】に至る。
(キュブラー・ロスの「死の受容モデル」の引用より)

両親は、当初A君に大きな失望を感じさせまいとしたせいで、A君は悲しみの最初の3段階(【拒絶】【怒り】【交渉】)から先へ進めなくなっていました。
両親は、A君のイライラが激しくなると、たいていA君の言うとおりにしてしまうので、A君は何かをして欲しい時は、まず【拒絶】から始めます。
そして、両親が「ダメ」と言っても「折れて、イエス」となることを過去の経験からわかっており、いくら両親が強く「ノー」と言っても拒絶します。
そして両親が負けじと戦いが始まり、激しい【交渉】となり、結局は両親はA君に屈してしまいます。

A君が、自分では変えられなかったり思うようにならなかったりするものに出くわすたびに直ぐに感情を爆発させてしまうのは、子どもは、欲しいものが手に入らなくて悲しいと感じることができない限り【受容】の段階に進むことはできません。航海に例えるなら、両親がA君に対して「船長」としての役割を果たすためには、 まず両親自身の内面にしっかりと「錨(いかり)」を下ろし、息子の「悲しみ」や「失望」に耐えられる必要があります。
そのため、診察でご両親に尋ねました。
「A君は、どんなふうに思うでしょうか?両親が自分に悲しい思いをさせまいと何でもしてくれるとしたら、A君自身には失望を乗り越える力があると信じてもらっていると思うでしょうか?」

この発想は両親にとって衝撃的で、両親は徐々に気づき始めます。
A君自身の問題を親が代わって解決しようとしたり、言葉でごまかして怒りをなだめようとしたりするのは、A君に
「おまえには、人生が思い通りにならないときに、自分で何とかする力があるとは思えない」
と言っているのと同じだということを。

その後、両親がA君の心を傷つけることに対する不安を探り、もっと自信をもってA君の激しい気性に向き合える方法を考えていきました。
たとえA君が望みのものを手に入れられなくても、親に解ってもらえたと感じられるような話し方をするようにしました。

例えば、
「ダメよ、夕食にクッキーなんて!」(ダメというのは、多くの子供を怒らせる言葉です)
というのではなく、たわいない要求に対決の姿勢にならずに答える。
「夕食にクッキー!楽しそうね!今度、あなたの誕生日にやってみようか?」
といった感じで。

両親は、これまでより多くの時間をA君のそばで過ごすようになり、A君が求めていた親子の触れ合いやつながりを感じられるようになりました。
そして、A君は自らもっといい子になって両親を喜ばせたいと思えるようになっていきました。

この過程の中で気をつけないといけないのは、多くの親は自分が理想とする親の基準に達してないと自分を責めずにはいられない傾向があります。親が自分を責めると親自身が傷つくだけでなく、子供も親に罪悪感や恥ずかしさを感じさせないよう、自分がいい子にならなければというプレッシャーを感じてしまいます。

徐々に両親は、息子に対する対応でつまづいたり失敗したりする自分を、自分で許すように努力しました。自分たちが息子に対して至らなかったことを認め、息子の感情を理解し、必要な場合には息子に謝る。そうすれば子育てで大変なことがあるたびに自分たちの根性が試されるなどと考えなくなる。
子どもが、自分の力で失望を乗り越えられる、強く、順応性のある、自立をしていくためには、親が境界線を決めてやることが大切なのです。